第212回国会(臨時会)において、大麻取締法改案(大麻使用罪創設)への反対をお願いする文書を全国会議員へFAX送信しました。

令和5年10月

国会議員の皆様へ

                一般社団法人ARTS
代表理事 田中 紀子

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 当法人は薬物やその他の依存症問題の誤解や偏見を払拭するために「啓発活動」「予防教育」「回復施設」「地域連携」「司法制度」のあり方について社会提言や調査及び研究などを行う団体です。また同時に、医療、行政、司法、民間団体等の皆様方と連携しながら依存症とその家族への直接支援も行っています。

 さて今秋の臨時国会で大麻取締法改正案が提出され「大麻使用罪」が創設されるのではないかと言われております。海外では解禁されている微罪による逮捕で若者の未来が奪われてしまう法律が創設されることを危惧しています。国会議員の先生方には「大麻使用罪」創設に賛成されないようお願い申し上げます。 

 本来ならば面談の上、お願いすべきところですが、書状でのお願いにつきまして、どうかご寛恕のほどよろしくお願いいたします。

1.世界の薬物政策は懲罰から「公衆衛生アプローチ」へ転換

 2010年、国連人権理事会及び第65回国連総会で、「犯罪化や過剰な法執行は、健康増進の取り組みを阻害し、スティグマを広め、薬物使用者だけでなくすべての人々の健康リスクを増大させる」として、「薬物使用に伴う害を低減する介入策(ハームリダクション)」と「非犯罪化」を推奨しました。

2011年「薬物政策国際委員会の宣言」
2015年 国連サミットで採択された「SDGs 持続可能な開発目標」
2016年 「国連麻薬特別総会成果文書」
2017年 「保健医療の場で差別を解消するための国連機関共同声明」
2018年 「国連人権理事会決議」2019年 「国連麻薬委員会の閣僚宣言」などへと引き継がれ、強化されています。
 世界の薬物対策は、すでに、懲罰的アプローチから人権に基づく公衆衛生アプローチへと、大きく舵を切りました。
2023年6月には国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が、「個人のための薬物使用と所持は緊急に非犯罪化されるべきであり、犯罪化は医療サービスへのアクセスへの障壁となり、その他の人権侵害をもたらす。違法薬物犯罪の扱いについて処罰を支援に置き換え、人権を尊重・保護する政策を推進すること」を求めた声明をだしました。
 さらに懲罰的措置から人権と公衆衛生に基づいた政策の活用への転換を求め、刑事罰として扱うことで社会的被害を及ぼしていると主張しています。そして個人使用のための薬物所持の非犯罪化を検討するなど、効果的な薬物政策を策定するよう繰り返し各国に求めています。

2.大麻のゲートウェイドラッグ仮説の誤解

 NIDA(アメリカ国立薬物乱用研究所)による表明で、大麻のゲートウェイドラッグ仮説は証明されておらず、大麻の使用が他の薬物使用の原因だと結論づけるエビデンスは 存在しないことがわかりました。仮に大麻がゲートウェイドラッグになるという仮説が正しければ、大麻の検挙数の増加に伴い覚せい剤での検挙数も増えることになりますが、そうはなっていません。さらに刑事司法で罰するからこそ違法なものとして取引きされることで、大麻と覚せい剤の購入が近いものとなっているという指摘がされています。

3.犯罪化は社会的排除をうみ、健康被害より大きなリスクを与えます

 大麻は国際条約「麻薬に関する単一条約」で規制されていましたが2020年に附表Ⅵ「最も危険で医療価値無し」から削除され、危険度が下がり医療的価値も認められています。
 2022年10月にアメリカのバイデン大統領が、大麻の所持で有罪判決を受けた人たちに恩赦を与えると発表し、大麻所持での有罪判決で「不必要に雇用や住宅、教育の機会が奪われる可能性がある」と述べ「大麻に対するアプローチを誤った。今こそ、誤りを正す時」と強調しており、「低リスク薬物」に指定する規制区分の見直しをしています。
 厚生労働省の発表では「大麻事犯における検挙人員及び30歳未満の割合」は69.2%とありますが、当事者の健康被害や社会に対する悪影響は軽度であるにもかかわらず、逮捕によるデジタルタトゥーで、退学・解雇などで将来や生活の糧を失い、友人や家族を失い、社会的な孤立から再使用に陥った経験を持つ人が少なくありません。また、不起訴になっても、就職の内定取り消しや、家族までもが離職や転居を余儀なくされた例もあります。
 大麻使用罪の創設は「犯罪者」として排除される人を増やすことになります。
 さらに逮捕による取り締まり、司法、矯正による政策は、経済上のコストの増額につながります。逮捕や収監に使われる税金を若者のメンタルケアや、ハイリスク層の支援に回すほうが社会の好循環を生み出します。

4.懲罰から回復支援・予防啓発への転換を

 「薬物問題」をみる際には、エビデンスに基づく正しい知識のもと、薬物使用に深く関連した生き辛さなど、背景にある問題を考察し人権を尊重、保護した上での相談や治療、回復支援に力を入れる施策を求めます。そして、当事者や家族を地域で孤立させない予防啓発への転換を強く望みます。

以上の理由により、臨時国会において「大麻使用罪」創設の審議が行われた際には賛成しないようお願い申し上げます。

                                   以上

PDFはこちら

(注記)サムネイルのチラシは当会SNSにおいて、啓発活動を行ったものです。
   議員の皆様へのFAX送信には至っておりません。

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