海外の論文や声明を紹介いたします。
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海外の論文や声明を紹介いたします。
部活動等でスポーツに打ち込んできたアスリートが急に目標を失うと、依存症を発症してしまうケースは海外の先行研究でもあきらかになっています。 そこで一般社団法人 ARTSでは、国民体育大会や全国高校野球選手権大会等の中止を受け、青少年アスリートに対する依存症発症の懸念を感じ緊急アンケート調査を行いました。 回復途上にあるアルコール・薬物・ギャンブル(含ゲーム)依存症者354名のうち、スポーツに打ち込んだ経験のある295名に対し、スポーツからの引退やリタイアが自分の依存症に影響があったかどうかを質問紙もしくはネット調査で回答しました。
その結果10%の人が「依存症を発症した」と答え、22%の人が「もともと依存傾向もしくは依存症であったが量や頻度が増えた」と答えています。 ましてや、国体や甲子園に出場予定であった選手らの喪失感は非常に大きいものと思われ、アスリートたちへの依存症予防教育とメンタルケアの充実を求めます。
【Q1】 あなたは何の依存症ですか?(複数ある場合はメインの依存症を一つだけ選んでください)

| 回答者率 | 回答者数 | |
| アルコール | 32 | 112 |
| 違法薬物 | 34 | 121 |
| 処方薬・市販薬 | 5 | 19 |
| ギャンブル | 28 | 100 |
| ゲーム | 1 | 2 |
| 合計 | 100(%) | 354(人) |
【Q2】 学生時代の部活や社会人チームなどでスポーツに打ち込んでいた経験がありますか

| 回答率 | 回答者数 | |
| ある | 83 | 295 |
| ない | 17 | 59 |
| 合計 | 100(%) | 354(人) |
【Q3】 あなたがスポーツに打ち込んでいたのはいつまでですか?

| 回答者率 | 回答者数 | |
| 中学校の途中まで | 15 | 45 |
| 中学校卒業まで | 25 | 75 |
| 高校の途中まで | 16 | 46 |
| 高校卒業まで | 24 | 71 |
| 大学の途中まで | 3 | 8 |
| 大学卒業まで | 4 | 11 |
| 社会人 | 13 | 37 |
| プロ | 1 | 2 |
| 100(%) | 295(人) |
【Q4】 打ちこんでいたスポーツの種類を教えて下さい(複数回答あり)

| 回答者率 | 回答数 | |
| 野球 | 20 | 63 |
| サッカー | 17 | 55 |
| バレーボール | 5 | 15 |
| テニス | 6 | 19 |
| ハンドボール | 2 | 6 |
| バスケットボール | 13 | 41 |
| 他球技 | 5 | 17 |
| 陸上 | 5 | 16 |
| 柔道・空手・格闘技 | 11 | 36 |
| その他 | 15 | 49 |
| 合計 | 100(%) | 317 |
【Q5】打ちこんでいたスポーツを辞めたきっかけはなんですか (複数回答あり)

| 回答者率 | 回答者数 | |
| 卒業や引退 | 45 | 128 |
| 年齢的な限界 | 7 | 14 |
| 怪我などの身体的理由 | 5 | 19 |
| 実力不足などを感じて | 15 | 47 |
| 精神的限界 | 4 | 30 |
| 金銭的限界 | 2 | 3 |
| その他 | 16 | 61 |
| 合計 | 100(%) | 302 |
【Q6】打ちこんでいたスポーツを辞めた時どんな心境でしたか

| 回答者率 | 回答者数 | |
| ぽっかりと心に穴が空いたようだった | 15 | 45 |
| やることがなくなった | 23 | 68 |
| 目標を見失った | 8 | 25 |
| ホッとした | 28 | 84 |
| その他 | 25 | 73 |
| 合計 | 100(%) | 295(人) |
*元プロ野球選手の 清原和博氏も、2020/7/7 フジテレビ放送の「石橋、薪を焚べる」に出演された際に、薬物に手を出したきっかけを「ひざのリハビリをしなくてよくなり、時間ができたことと、今の選手って、野球を辞めた後のビジョンとか作っていますけど、僕は野球ばっかりやってきて心にぽっかりと大きな穴が空いてしまったんです。どうやって生きていったらいいのかわからなくなりました」と話されています。
【Q7】打ちこんでいたスポーツを辞めたことは、あなたの依存症に影響がありましたか?

| 回答者率 | 回答者数 | |
| 辞めたことがきっかけで依存症を発症した | 10 | 30 |
| もともと依存傾向もしくは依存症であったが量や頻度が増えた | 22 | 64 |
| 特に影響はなかった | 68 | 201 |
| 合計 | 100(%) | 295(人) |

「自身の臨床経験を振り返っても、元アスリートの依存症患者さんは意外に多い。
人と競ったり、比較する心性は依存症と非常に親和性が高い。
スポーツによる達成感は脳内で大量のドパミンを放出し、非常に大きな快感をもた らすことから、優秀なアスリートほど、「脳内麻薬」依存症になっているといえるかもしれない。
したがって、引退後は何をやっても無味乾燥にしか感じられず、達成感を体験しにくい。そんなところやアルコールや薬物、ギャンブルが入り込むと、あっという間に依存症になってしまう人もいる。
中高大と部活で顧問をされている教師、あるいは、プロスポーツ業界も、たえず 「アスリートのセカンドキャリアにおけるメンタルヘルス」を意識した指導・教育が必要だろう。

一般社団法人日本トップリーグ連携機構では2016年より「アスリートアディクション 対策プロジェクト」を立ち上げ、アスリートの依存症予防教育推進に力を注いできました。2019年には、各リーグのアスリートやチーム関係者に向けたアルコールやギャンブル依存症予防啓発冊子を配布し、ホームページでも公開しております。
http://japantopleague.jp/archives/6722 (一社 日本トップリーグ連携機構HP) しかしながらアスリートに起こりうる依存症リスクはまだまだ知られておらず、
啓発やサポート体制の強化が課題だと感じています。 今年はコロナ禍という未曾有の事態で、大きな大会が次々と中止されており、今後も選手たちのメンタルケアについて慎重に対応していくことはもちろんのこと、トップアスリートとしての登竜門である学生スポーツ界でのケアの必要性も感じています。

挫折や喪失感、ライフステージの変化は、依存症の大きなリスク要因である。
そう考えると、アスリートは依存症におちいるリスクが高いことになる。
スランプや怪我など挫折はつきものだし、華やかな成績を収めた選手にも必ずピークを過ぎる日は来て、引退して第二の人生へと踏み出さなければならない。
依存症の予防に必要なのは、「正しい知識」とストレス対処などの「ライフスキル」、そして回復できるという実感…アスクではこう考え、依存症予防教育アドバイザーを養成している。 予防と回復とは別物ではない。どん底を乗り越えた回復の知恵は、そのまま予防に活用できる。
それは、若いアスリートが、もう駄目だと打ちのめされたときの支えにもなってくれると思う。 アスリートにこそ依存症予防教育が必要だ。